研究概要 |
1。核子のスピンはその構成子であるクォークによっては殆んど担われていないという、いわゆる核子のスピンパズルは依然として現在のハドロン物理の未解決の重要課題である。この問題を解く鍵は核子中のもう一つの構成子であるグルーオンの振舞を知ることである。これについてすでに多くの理論的、実験的研究がなされてはいるが、その知識は未だに不十分である。我々も、ここ数年この問題に取り組んできたが、ここでは以下に述べるような分析を行ない一定の成果を得た。 (1)近く始まる予定のRHICでの実験を想定して、偏極pp反応におけるA^+_c生成過程を分析し、始状態の一つのpと生成A^+_cの間のスピン相関のp_T依存性を調べることにより、この反応がRHICのエネルギー領域で種々の偏極グルーオンのモデルの非常にいいテストになり得ることを明らかにした。 (2)偏極lp反応における大p_T領域のハドロン対生成過程の生成断面積とスピン非対称度を計算した。この反応は一般にはphoton-gluon fusionとQCD Comptonの2つの過程で起きるが、我々は、種々のハドロン対生成反応を適当に組み合わせることにより、QCD Comptonの寄与を除去し、従って、偏極グルーオンの振舞を広い運動学的領域で引き出せることを明らかにした(現在、論文作成中)。なお、ハドロン対としてcharmed hadronsを取った場合は、QCD Comptonの寄与を無視でき、解析が簡単になる(SPIN2000,Osaka,Oct.16-21,2000で発表)。 2。最近、HERAの実験でベクトル中間子の光発生回折過程が詳しく調べられ、従来、高エネルギーのハドロン反応を説明するとされてきたPomeronの物理に新しい光があてられようとしている。我々は、すでに新しいsuper Pomeronを導入することによって、重い中間子であるJ/ψ生成を説明して来たが、ここでは、このJ/ψ生成において、新たにtensor trajectoryの寄与を調べ、実験の予言を行なった。
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