研究概要 |
平成11年度は原子核内中間子原子分光学を発展させるための基礎を固める為の研究を実施した。具体的には以下の点が今年度の実績と成る。 最も深く束縛されたパイ中間子原子である1s状態を精密に観測す為に、標的原子核、入射エネルギー、等の最も適切な組み合わせを理論的に研究した。その結果、中性子数が50から82個程度の中重核のうちXe,Snが標的核として適切であり、入射重陽子のエネルギーとしては500MeVが最適であることが解った。この研究の際に標的核の選択はいろいろな要素を含むデリケートな問題で、事前の理論的評価が必須であることが明確になった。さらに、Sn同位体を標的として使うことにより、深く束縛されたパイ中間子原子のアイソトープシフトを観測可能であることを理論的に示した。 この理論的結果を基にドイツGSI研究所に実験を提案し、受理された。この実験は1〜2年の内に、日本-ドイツ混成実験グループによって国際的な共同研究として実施される予定である。 更に、現在盛んに研究されている陽子/中性子過剰核にパイ中間子原子を生成する可能性について理論的に研究した。広い範囲の不安定核に対する系統的な研究の結果、生成断面積が定量的に評価できた。実際の実験可能性としては、理化学研究所において建設中新加速器、RI beam factoryが考えられる。 また上記研究成果を、国内/国際学会での発表や論文出版によって積極的に発表している。
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