平成12年度は原子核内中間子原子分光学の研究を更に発展させた。具体的には以下の点が今年度の実績と成る。 最も深く束縛されたπ中間子原子の1s状態生成に関して理論計算を進め、実験研究者と協力しながら実験実施に向けて準備を進めた。この実験は既にドイツGSI研究所で2001年4月に実施されることが決まっている。準備の内容は、最適なエネルギー/標的核を決定するための理論的な計算や得られる予定の分光学的物理量から得られる新しい知見に関する議論等がある。これらの内容については、国際学術論文として出版されている。 更に、中性子過剰核等の不安定原子核に深く束縛されたπ中間子原子を生成する反応の系統的な研究もなされて、実験可能性についての議論がなされている。この系はπ中間子と原子核の相互作用が強いアイソベクトル型の項を持つことを利用して原子核の密度分布を決定できる可能性があるという利点を持つ。ハロー中性子の存在による効果も議論を始めている。中性子の波動関数が大きく核の回りに広がっていれば生成断面積の顕著な増大が見られる可能性が有り興味深い。 また上記研究成果を、国内/国際学会での発表や論文出版によって積極的に発表している。
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