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2001 年度 実績報告書

昆虫の脳の作動機作―多才な行動を可能にする小さな脳のオペレーションシステム

研究課題

研究課題/領域番号 11694091
研究機関九州大学

研究代表者

藤 義博  九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (60037265)

研究分担者 伊藤 啓  基礎生物学研究所, 助手 (00311192)
高畑 雅一  北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10111147)
市川 敏夫  九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (50136420)
キーワードハンミョウ / カマキリ / 昆虫 / 単眼 / 複眼 / 距離測定 / 視葉 / 脳
研究概要

昆虫の脳はミリグラム単位でヒトの脳に比べて極めて微小であるが、この微小な脳で昆虫は補食、逃避、複雑な配偶行動等の多才な行動レパートリーを示す。微小な脳でヒトと類似の機能をもつ仕組みを解明することが本研究の目的である。本報告では距離測定の視覚神経機構についての成果を説明する。多くの動物にとって、対象までの距離を測ることは最も重要な視覚情報である。現在まで、その神経機構が明らかにされた例はない。ハンミョウの幼虫とカマキリの視覚中枢を対象とし以下の知見を得た。
1)ハンミョウの幼虫は巣穴で餌となる動物を待ち伏し、適当な大きさの昆虫などが近づくと、ジャンプして捕獲するが、捕獲可能な距離範囲外であれば巣穴の奥に逃避する。幼虫は頭部に4対の単眼を持つ。本研究では幼虫が4個の単眼の協調で対象物の距離を測定している可能性が明らかにした。同時に、1個の単眼でもある程度の距離測定が可能なことも示した。
2)単眼下にはラミナ、メダラの2層の視神経叢が位置し、メダラの介在ニューロンの軸索が視神経を形成し脳に延びる。本研究では第2視神経層であるメダラで距離に感受性を示すニューロンを同定した。メダラ層には反対側のメダラ層からの入力も確認され、単眼性、両眼性の距離感受性がメダラで形成され、視神経を経て脳に伝えられることが明らかになった。
3)カマキリは両眼で距離を測りカマ(前肢)を打ち出し、えさを捕獲する。両眼視の領域は左右の複眼の前面部に限られる。この領域から脳へのニューロン投射を組織学的に調べた。この領域は複眼の他領域とは区別され太い繊維で前大脳に投射することが明らかになった。複眼前面部からの投射が距離測定のため特別に分化した経路である可能性を検討中である。
3)以上の結果から、昆虫ではかなり高度の情報処理を末梢の感覚器、神経層で行い、小さな脳が多才に機能をするようにデザインされていることが示された。

  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (4件)

  • [文献書誌] Toh, Y., Ikeda, S., Okamura, J.-Y., Okada, J.: "Intracellular responses of antennal chordotonal sensilla of American cockroaches"Zoological Science. (in press). (2002)

  • [文献書誌] Okada, J., Toh, Y.: "Peripheral representation of antennal orientation by the scapal hair plate of the cockroach Periplaneta americana"Journal of Experimental Biology. 204. 4301-4309 (2001)

  • [文献書誌] Okamura, J-Y., Toh, Y.: "Responses of medulla neurons to illumination and movement stimuli in the tiger beetle larvae with their relation to distinct visual behavior"Journal of Comparative Physiology A. 187. 713-725 (2001)

  • [文献書誌] Toh, Y., Okamura, J.-Y.: "Behavioural responses of the tiger beetle larva to moving objects : role of binocular vision and monocular vision"Journal of Experimental Biology. 204. 615-625 (2001)

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公開日: 2003-04-03   更新日: 2016-04-21  

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