研究概要 |
素粒子の標準理論の検証は現在最大の課題の一つである.その中で強い相互作用を記述するQCD(量子色力学)のasymptotic freedomについては多くの高エネルギー反応においてその有効性が検証されてきているものの,ハドロン相互作用の理解のためには,非摂動領域での実験による理論の検証が不可欠である.この領域での計算は一般に非常に複雑であり,信頼性のある精度の高い理論計算は難しいが,そのなかでπ中間子散乱は計算によって非常に高い精度の予測のできる希有の例である. 本共同研究は,CERN(欧州共同原子核研究機構)の陽子シンクロトロンにおいてπ^+π^-原始の寿命を直接測定することによりπ^+π^-散乱長を求める実験(PS212,通称DIRAC)をロシア,欧州の研究者との協力で行うものである. 1998年度にビームラインが完成し,6週間与えられたのテストビームによって得られた検出器,データアキジションシステムのテストデータの解析を本年度初頭に行った.その結果を踏まえて検出奇形に改良を加え,6月から本データの取得を開始した.8月には日本グループの担当するシンチレーティングファイバーホドスコープ及びレベル2トリガーについての論文を作成するための基礎データ取得を1週間狭んで9月から再び本データの取得を11月まで続け,現在は得られたデータの解析中である. データは予定の4ターゲット中から集中的にNiとPtについて取得した.統計はかなり良く,解析の途中経過については1999年12月INSシンポジウムにおいて発表した(論文3,4参照). それと平行して今後の検出器系の改良のために1)dE/dxカウンタ信号の新しいインテグレータの製作.2)半導体検出器を用いた新しいdE/dxカウンタの製作.3)スペクトロメータマグネット中に新しいシンチレーティングファイバーホドスコープ面を増やす準備等のR&Dやテストも行ってきた.
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