研究課題
基盤研究(A)
ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)に建設された電子・陽子衝突型加速器HERAを用いて、電子陽子間の深部非弾性散乱を精密測定し新粒子の探索と陽子構造を測定した。我々を含む12カ国の国際共同実験グループZEUSが実験装置を建設し運転している。この装置を用いて、27.5GeVの陽電子(または電子)と920GeVの陽子との衝突実験を進め、2年間で積算ルミノシティ67pb^<-1>を得た。高い運動量移行(Q^2>200GeV^2)での(陽)電子・陽子衝突反応での中性流及び荷電流散乱断面積の測定や、Q^2およびBjorken x変数(XBJ)で6桁にわたる広い運動学的領域で非弾性散乱データをもとに、陽子の構造関数を測定した。その結果と量子色力学のモデルとの比較により陽子内部のクォークとグルーオンの分布を決定する解析を進めた。摂動的量子色力学によるフィットはQ^2で1GeV^2以上の広い範囲で、よくデータを再現することがわかり、陽子内部のグルーオン量はXBJが減少するとともに急激に増えることを示した。この解析強い相互作用の結合定数をよい精度で求めることができ、この実験や他の電子・陽電子衝突のジェットの解析からの値とよく一致し、強い相互作用の一般性と量子色力学の妥当性を示すことができた。Q^2の小さな領域(1GeV^2付近)ではグルーオンの分布が負になる傾向があることがわかり、また、これより低いQ^2領域でモデルがデータを再現できないことから、摂動的量子色力学の適応限界になると考えられるが、今後、より高次の理論計算の発展を待つ必要がある。高いQ^2で得られた結果と標準模型の予想とを比較するとよく一致し、そこから新相互作用等の模型に制限を加えた。レプトクォークや励起レプトンの兆候はなく、これらの粒子質量の下限を定めた
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