研究課題
基盤研究(A)
気球搭載型超伝導スペクトロメータ(BESS)を用いて地磁気限界硬度の小さなカナダ北部において宇宙粒子線観測気球実験を実施し、低エネルギー一次宇宙線反陽子の絶対流束及びエネルギースペクトラムを観測した。同時に一次宇宙線陽子・ヘリウム成分の精密なエネルギースペクトラムを測定し、気球上昇中のデータを用いて様々な大気高度での各種宇宙粒子線強度の観測を行った。宇宙粒子線観測気球実験は平成11年6月末よりカナダ北部マニトバ州リンレークで準備を行い、8月上旬に気球実験のチャンスに恵まれた。1回目の実験においては気球のトラブルにより観測を行えずに実験を中止し水上で測定器を回収するというアクシデントが生じたが、迅速な測定器回収・修理を行って8月11日に再度測定器を高度38kmの高空に打ち上げ、これまでの実験で最長の37時間の宇宙粒子線観測実験を実施できた。この実験で平成10年度に比べて1.7倍のデータを収集でき、これまでのデータ解析で約700例の反陽子事象を捉えることができたことが確認されている。平成11年度の実験で太陽活動が極小から極大に至る中間状態での運動エネルギー5GeVまでの宇宙線反陽子のスペクトラムを測定することができ、平成10年度までの観測データから得られた太陽活動極小期におけるスペクトラムと比較することによって、1次起源反陽子の存否を探索できると期待される。BESS測定器は実験終了後直ちに日本に送り返され詳細なチェックの結果圧力容器内部の粒子検出器に損傷がないことが確認された。着水時に損傷を受けた圧力容器外部の電源制御システムについては帰国後平成12年度の実験に向けて修理を進めている。
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