研究課題
第一には、物質の融点が80℃近辺で排熱の有効活用に利用可能なPCMについて硝酸マグネシウム・6水和物を選定し、この物質について融点の調整、熱応答試験による利用可能エンタルピーの測定、および熱交換特性に関する実験的検討を行い、その利用可能性を明らかしたことである。具体的には、まず、示差走査熱量計を用いて融点、凝固点、潜熱量を実測し、コストや毒性の有無等を考慮して、硝酸マグネシウム・6水和物を対象PCMとして選定した。しかし、この物質の融点は90℃以上であり一般的な地域熱供給で利用するには高いため融点の調整が必要となるが、今回、この物質に塩化マグネシウム・6水和物を数%から十数%添加することで保有している潜熱量をほとんど減少させることなく融点を90℃から60℃程度まで調整することが可能であることを見出した。上記は試薬特級を用いて実測を行ったものであるが、実際のシステムのように大量に使用する場合には高純度な試薬は用いることが不可能であり、一般的な工業用製品の使用が必要になってくる。そこで、工業用製品を用いて25mlの容器での熱応答試験を行うと同時に、単純な垂直型熱交換装置を用いて工業用製品の混合物について蓄熱・熱回収特性に関して実験的検討を行った。その結果、融点、融解潜熱量に関しては、試薬とほぼ同じ値が得られることがわかった。また、過冷却はほとんど観測されないこと、75〜85℃の温度幅における利用可能エンタルピーは72kJ/kgであり、単位体積当たりで水の顕熱の2.8倍であることを明らかにした。第二には、粒状の多孔質に保持されたPCMの利用可能性について検討した。ここでは、空気との直接接触による熱交換特性に関する基礎的な円筒カラム実験を行い、種々の温度差、面風速における蓄熱・回収時の熱フラックスと持続時間を明らかにした。
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