研究概要 |
本研究は、キャビテーション噴流により機械材料の耐食性および機械的強度を同時に向上させるハイブリッド表面改質の実証とその手法の確立を目的とする。本年度は,キャビテーション噴流の制御と,キャビテーション噴流まわりの衝撃力と表面改質の相互関係を明らかにするために以下の研究を実施した。 1.キャビテーション噴流の制御 東北大学が有するキャビテーション噴流試験装置を用いて,キャビテーション気泡の崩壊衝撃力を,キャビテーション噴流の噴射圧力と被加工物を設置する水槽の圧力により制御できることを明らかにした。 2.キャビテーション衝撃圧の定量的評価と表面改質の相関関係の解明 祖山らが開発したPVDFセンサを用いたキャビテーション衝撃力計測装置により,キャビテーション衝撃力を計測し,耐食性向上や疲労強度向上などの表面改質に適した加工条件を明らかにした。同条件により加工した試験片を回転曲げ疲労試験に供した結果,疲労強度を向上できることを実証した。 3.材料評価学・材料力学および流体力学の両面を考慮したキャビテーション噴流によるハイブリッド表面改質の最適加工条件の確立 流体現象であるキャビテーションは,非加工面形状に強く依存するので,歯車などの表面改質を目的として,材料と流体の両分野の観点から表面改質の最適条件を探求した。歯車にキャビテーション噴流を噴射して,歯面の残留応力をX線回折式応力測定装置により計測した結果,歯底に圧縮残留応力を導入できることを明らかにした。またペイント法を用いて表面改質領域を測定した結果,キャビテーション気泡が歯幅方向に流れるために,平板にキャビテーション噴流を噴射した場合に比べて,歯底を広範囲に表面改質できることを明らかにした。
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