研究概要 |
Fe-AlやFe-Si2元系のBCC相は,A2,B2およびD0_3の規則-不規則変態と磁気変態が交差し,相互作用を及ぼしあうために,変態温度の異常な変化や規則相と不規則相の2相分離など,複雑な相平衡を示す.本研究では,これらの相変態と相互作用効果をCALPHAD法lこよる自由エネルギーの近似式に取り込んで,BCC構造の各相の相安定性を解析した.スウェーデン・王立工科大学のBo Sundman教授によって正則溶体近似で表される不規則相の自由エネルギーに規則相の寄与を副格子モデルで追加する自由エネルギーの記述式が開発された結果,規則相における磁気変態点と自由エネルギーが相平衡の計算に容易に取り込めるようになった.原子配列の規則化に伴い,磁気変態点T_cが上下に偏倚するような条件を設定して行ったモデル計算の結果,規則相内でT_cが上昇する場合には,規則相が安定化して規則-不規則変態の境界が拡大すると同時に,磁気変態に基づく2相分離が生じた.一方,T_cが低下する場合には,規則相が不安定になるために自由エネルギー曲線に変化が生じて,規則相と不規則相の2相分離が生じることが分かった.Fe-Al2元系に現れるBCC相の2相分離はT_cが低下に伴い生じるものと考えられるため,従来報告されている実験データと熱力学的解析に本研究のモデルを適用して,Fe-Al2元系状態図の熱力学的解析を行った.Fe-Al2元系に現れるBCC相の2相分離は600℃近傍ではA2+B2であるのが,温度の低下に伴いA2+D0_3に変化する.これ従来のBWGの理論計算に矛盾する極めて不可解な現象であったが,A2+B2の2相分離が原子配列の規則化と磁気変態の相互作用によって現れるものと考えると,これまでの理論に矛盾無く説明できる.
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