研究概要 |
1.正イオンビーム処理と負イオンビーム処理基材の工学的物性評価 辻助手をBrown博士の米国ローレンスバークレイ国立研究所に派遣し、Brown博士らのMEVVA装置を用いてマンガン正イオンをポリスチレンに10keVで1×10^<15>から1×10^<16>ions/cm^2の注入量で注入して正イオンビーム処理試料を作製した。また、持参した銀負イオン注入ポリスチレン表面をAFMにより表面モルフォロジーの変化を測定した。さらに、注入原子深さ分布の注入量依存性が計算できるTRIM-DYNプログラムを用いて、銀イオンの注入原子深さ分布を計算した。その結果、銀負イオン注入したポリスチレン表面は数nm程度の粗さであり、極めてなめらかであることが判明した。また、深さ分布では1×10^<16>ions/cm^2の注入量を超えるとスパッタリングによる表面後退が大きく、浅い位置に、かつ濃度に上限があることが明らかとなった。また、研究成果をドイツの開催されたRadiation Effects in Insulators-10,REI-10(July 18-23,1999,Jena)で公表した。 2.負イオンビーム処理基材とマンガン正イオンビーム処理基材の生物学的評価 米国のBrown博士を招へいして、マンガン正イオンビーム処理したポリスチレンと銀負イオン注入したポリスチレンにラット由来の神経細胞PC12hの培養実験を行った。その結果、銀負イオン注入基材をはもとよりマンガン注入基材においても良好な神経細胞の選択的接着および神経突起の伸展が観測された。 3.各種負イオンビーム処理基材の工学的物性評価と生物学的評価 炭素および銅、銀負イオンビーム処理ポリスチレンを用いて、表面の接触角と細胞接着特性を比較した結果、炭素では接触には変化が見られなかったが、良好な細胞適合性を示した。銅と銀では接触と細胞接着特性は良い対応を示した。細胞適合性は表面に導入された親水基の寄与によると考えられるが、乾燥した状態における接触角の評価ではこれが正しく評価できないと考えられる。
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