研究概要 |
これまでに得られた研究結果を以下に列挙する。 1.兵庫県南部地震において芦屋浜高層住宅が被害を生じた原因解明のため、連続体モデルを用いた数値解析を行った。1階の極厚ボックス断面柱の破断は高軸力と曲げモーメントにより発生した。更に、塑性ヒンジが初期に集中して発生する階では、構造物の損傷を受けやすく、塑性ヒンジが発生していない階では被害は発生していない。塑性ヒンジが集中的に作用する事を避ける必要がある。 2.芦屋浜高層住宅のブレースと柱の接合部が一体となって破断した原因は、剛接ブレースに作用している軸方向力と剪断力から生じる鉛直上向き成分の力によって、ブレースが上向きに引っ張られて破断し、次に、柱の破断を誘発した。芦屋浜高層住宅におけるサイトの合成地震波による動的応答結果は、六甲アイランド地震波による応答結果と概ね同傾向を示すが、後者の方が大きな応答結果を与える。直下型地震では地震波の初期の段階において急激なエネルギの変化を生じ、構造物に大きなダメージを与える事が明らかになった。 3.兵庫県南部地震で顕著な被害を被った橋脚に対しコンクリートおよび鋼モデルの動的数値解析を遂行した結果、激しい直下地震の場合などでは初期の過渡応答過程がその後の動的挙動に支配的な影響を及ぼすこと、またそれは、構造物の大きさや形、支持・境界条件と初期地震動のプロファイルによって著しく異なる事がわかった。 4.鋼管の圧縮衝撃実験および弾塑性数値解析によって、軸方向波動伝播が不均等分布の軸方向ひずみを惹起し、境界条件によっては、端部以外にも象足座屈を生ぜしめる場合がある事も判明した。 5.小型鋼モデルの衝撃せん断試験を行い、電子顕微鏡写真によって破断面を観察した結果、延性すべりを伴ったせん断破壊が生じた。 6.地震動の初期の急峻な地盤の揺れにより生じる「構造物の過渡応答過程」での衝撃負荷に対する耐衝撃対策の指針を明らかにするために,橋脚等の縮小モデルとしての鋼製円管の動的変形挙動について実験的検討を行った.また,材料特性の及ぼす影響についても検討するため,一部の実験は,強度や加工硬化形態の異なるアルミニウム材についても実施した.これらの研究の詳細については日本機械学会論文に取りまとめている.また,円管内に衝撃吸収効果のある異種材料を充填し,その耐衝撃性を向上させる研究も遂行している。
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