研究概要 |
融液から電子材料用・光学材料用単結晶を育成する際,マランゴニ対流(界面張力差駆動対流)は育成単結晶の品質に大きく影響を及ぼすため,育成単結晶の高品質化を図る上でマランゴニ対流の微細機構を明らかにする必要がある。そこで本研究では,落下塔を用いた本格的な微小重力場を利用し,重力対流の無い真のマランゴニ対流現象を観察し,加えて実験と同様の数値シミュレーションを実施することにより,マランゴニ対流現象の微細機構を明らかにすることを目的としている。本年度は,以下の研究を実施した。 (1)矩形型実験装置を製作し,矩形内マランゴニ対流の遷移過程の観察を行った。その結果,駆動力の増大に伴い,二次元層流から三次元層流を経て三次元振動流へと遷移することを明らかにした。 (2)現有の微小液柱実験装置を使用して地上及び微小重力実験を実施した。その結果,マランゴニ対流の周期的振動には,定在波によるものと進行波によるものが存在することを明らかにし,周期的振動のモデル式を提出した。さらに,微小重力場では,地上で観察された超安定領域が消滅することを明らかにした。 (3)非定常数値計算コードを開発し,落下塔に代表される1GからμGへのステップ変化に伴う固液界面上の熱流束を計算した。得られた結果は,実験より得た結果と良好な一致を示した。また,宇宙環境においても存在する残存重力の影響を検討するために,拡散係数測定法のひとつであるLong Capillary法を模擬した数値計算も行い,対流発生と残存重力の関係を明らかにした。 なお,本年度は,微小重力実験装置の検討及び研究討論等を行うため,日独間を延べ3名(2000年3月出張予定含む),日米間を延べ2名が往復した。
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