発光細菌フラビン/ニトロ還元酵素とその変異体のX線結晶構造解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11694194
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 田之倉 優 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60136786)
• 研究分担者: 佐々木 宏 大分医科大学, 医学部, 助手 (80272467)
• キーワード: フラビン / ニトロ還元酵素 / 発光細菌 / 変異体 / X線結晶構造解析 / 基質特異性

研究概要

発光細菌Vibrio fischeriが産生するフラビン/ニトロ還元酵素FRaseIは、広い特異性を持つ。本研究ではFRase Iについて阻害剤および基質アナログとの複合体ならびに変異体のX線結晶構造解析を行い、酸素反応機構と基質特異性発現の機構を原子レベルで明らかにすることを目的として研究を行った。既にFRase Iの結晶構造を1.7A分解能で決定してあるので、さらに阻害剤であるジクマロールやヒドロキシクマリン、ワーファリンとの複合体のX線結晶構造解析を行い、複合体の構造を決定した。その結果、阻害剤の認識には補酵素であるFMNのイソアロキサジン環およびPhe124のフェニル基により阻害剤のクマリン環をサンドウィッチすること、ならびにタンパク質のIle43の主鎖アミド窒素と阻害剤の酸素原子との間で水素結合を形成することが重要であることが明かとなった。また、FRase Iの活性に関与するPhe124を種々のアミノ酸に置換した変異体を作製して、酸素反応速度解析を行った。そのうちで、Phe124Ala変異体およびPhe124Trp変異体については、変異体酵素ならびにそれらと阻害剤との複合体のX線結晶構造解析を行った。得られた3次元構造から、基質特異性を実現している残基およびそれらの配置の意義について考察した。

研究成果

• [文献書誌] Iwasaki, W., Sasaki, H., Nakamura, A., Kohama, K. and Tanokura, M.: "Crystallization and preliminary X-ray diffraction studies of a 40kDa calcium binding protein specifically expressed in plasmodia of Physarum polycephalum"J. Biochem.. 126(1). 7-9 (1999)
• [文献書誌] Kobori, T., Lee, W.C., Akagi, T., Sasaki, H., Zenno, S.,Saigo, K. and Tanokura, M.: "Crystallization and preliminary crystallographic analysis of major nitroreductase from Escherichia coli"Acta Crystal. D55. 1901-1902 (1999)
• [文献書誌] 田之倉優,小堀俊郎: "フラビン還元酵素の構造決定と機能解析"バイオサイエンスとバイオインダストリー. 56(5). 319-322 (1998)
• [文献書誌] 小堀俊郎,田之倉優: "フラビン還元酵素FRaseIとそのファミリー"化学と生物. 36(6). 355-356 (1998)
• [文献書誌] 小堀俊郎,田之倉優: "発光細菌Vibrio fischeriのフラビン還元酵素の結晶構造"構造生物. 5(1). 9-14 (1999)
• [文献書誌] Lee,W.C.,Hirai,T.,Kobori,T.,Sasaki,H.,Koike,H.,Tanokura,M.,Zenno,S.,Saigo,K.,Nishino,T.,Murphy,M.E.P.,and Adman,E.T.: "Reaction and substrate reoognition of the flavin reductase FRaseI from bioluminescent bacterium Vibrio fischeir.Biochemistry and X-ray crystallography of FRaseI.Flavins and Flaboproteins 1999 (Ghisla,S,Kronech,P.,Macheroux,P.and Sund,H.eds.)"Rudorf Weber-Agency for Scientific Publications,Berlin,Germany.. 709-718(20P) (1999)