研究概要 |
発光細菌のフラビン還元酵素は発光現象と密接な関係があり、また、ニトロ還元酵素は突然変異と関連している。本研究では酵素反応機構と基質特異性の機構を原子レベルで明らかにすることを目的とし、発光細菌Vivrio fischeriiが産生するフラビン還元酵素FRaselと大腸菌ニトロ還元酵素NfsAについて結晶構造解析を野性型と変異体について行った。 既に野性型FRaselの結晶構造を1.7Å分解能で決定しており、さらに阻害剤であるジクマロールやヒドロキシクマリン、ワーファリン等との複合体についてX綿結晶構造解析を行い、構造を決定した。同時に、ランダム変異を導入した結果、FRaselの活性に関与するとみられたPhe124を種々のアミノ酸に置換した変異体を作製し、酵素反応速度解析を行った。特にPhe124Ala変異体およびPhe124Trp変異体については、変異体酵素単独ならびに、それらと阻害剤との複合体のX線結晶構造解析を行い、基質特異性を実現しているアミノ酸残基について考察した。 また、FRaselをはじめNfsA, NfsB等を含む酵素ファミリーは、いずれもフラビン還元活性、ニトロ還元活性、キノン還元活性を有するが、最も活性が高い基質により分類されることが明らかとなった。 NfsAについてはPCRによりランダム変異を導入し、活性スクリーニングにかけ、複数の活性変異体を得た。このうちPhe42を11種のアミノ酸に置換した変異体を作成し、NADPH酸化活性について解析した。その結果、基質結合ポケット内のベンゼン環構造が、NADPHの特異性に寄与することが示された。
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