研究課題/領域番号 |
11694197
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 俊 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40183892)
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研究分担者 |
鈴木 聡 高知大学, 農学部, 助教授 (90196816)
田上 英一郎 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (50133129)
小暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
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キーワード | 海洋 / 溶存有機炭素 / 炭素循環 / 微生物 / ペプチドグリカン / 分解 / 細菌 / 放射トレーサー法 |
研究概要 |
海水中に多量に蓄積する細菌由来の有機ポリマーの生成、蓄積機構を解明するために、放射トレーサーを用いた、高感度アッセイシステムを新たに構築することに成功した。14Cないしは3H標識N-アセチルグルコミンサンを含むペプトン培地中で培養した海洋細菌(Vibrio属)から、超遠心分離法により、細胞壁成分ペプチドグリカンを抽出した。高解像度有機解析システムを用いて、放射能の分子内分布を調べたところ、調製された標品には、夾雑物の混入がほとんどないこと、また、標識は標的分子に特異的であることが示された。これを海水中に添加し、基質の低分子化、無機化を測定することにより、有機ポリマーの変性、分解過程を現場生態系条件下で詳査することが可能になった。とくに重要なのは、標識化合物の非活性が高いため、広範な海洋環境に本方法が適用可能な点である。大槌湾、東京湾、デラウェア湾(アメリカ合衆国)における観測の結果、ポリマーの断片化と、断片化した化合物の微生物代謝の間に脱共役が生じていることが初めて見いだされた。また、汽水域におけるポリマー分解速度が塩分と正の相関を示す減少も発見された。以上の結果と、現場での細菌由来ポリマーの分布データから、有機ポリマーの蓄積過程に関する予備的なモデルの構築を開始した。次年度は、ここで確立した手法をより広範な環境に応用することにより、細菌ー炭素循環システムの解明を推進する予定である。
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