本研究は、大規模な断層崖斜面の脚部に造られた西安市の華清池(楊貴妃の宮殿)、大規模地すべり斜面を登りきった山頂に造られたマチュピチュのインカの都市遺跡は、近年の都市化・観光開発などの影響も受けて、地すべりによる崩壊が懸念されている.本研究は、斜面防災対策の基礎として、この両試験地を対象として、移動計測・強度測定など数値に基づいた信頼しうる地すべり災害予測法を確立することを目的としている. 研究実施内容 1.中国西安市の華清池に設置し、現在、西安市臨憧地すべり観測所の職員が観測を行っている伸縮計、三次元せん断変位計、地震計、雨量計をデータロガーへ入力する自動観測システム(自動化の機種と数量は概算要求の採択の有無による)に切り替えるための第1段階として、2台の伸縮計を電子伸縮計に替え、華清池斜面から臨憧地すべり観測所及び防災研究所まで電話回戦を通じてデータ転送を行い、常時、斜面の監視を行えるようにした. 2.ユネスコ本部においてIGCP-425(文化遺産と地すべり災害予測)の会議を主催した.この会議での議論に基づいて、世界的な文化遺産と地すべり災害予測の研究を一層発展させるための中核として、ユネスコ事務局長と防災研究所長の間で「地すべり危険度軽減と文化・自然遺産の保護」に関する研究協力覚え書きを交わした. 3.ペルーのマチュピチュのインカの遺跡では、地球物理研究所、ペルーの不安定斜面保全委員会の協力を得て、これらの定量的観測・調査の予備調査として、ヘリコプターによる空影と観察、地上踏査、地球物理研究所内への電子伸縮計の試験設置を実施した.
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