研究概要 |
DNAの相同的組換えは,ほとんどすべての生物にみられる基本的な生命現象であり,中でもRecAおよびその相同蛋白質は,遺伝的組換えの中心的な役割を果たしている。近年,RecA/RAD51のホモログ,すなわちRadA蛋白質が原核生物から真核生物,さらに古細菌(Archaea)にも発見され,DNA相同的組換えのパラダイムは全生物界に広がってきた。しかし,X線結晶解析やNMRによる立体構造解析が難しく,蛋白質工学的に良く研究されている蛋白質などと比較すると,いずれの生物種のRecAホモログについても,立体構造に基づく分子機能解析はあまり進んでいない。そこで,そのような立体構造解析・分子機能解析に適した蛋白質を検索するとともに,これまでの分子機能解析をさらに推進することを試みている。RadAホモログの中でも,古細菌の相同的組換えや組換え修復のメカニズムについてはほとんど研究されていないので,radA遺伝子を超好熱性フル細菌Pyrobaculum islandicumからクローニングし,そのRadA蛋白質の性質および活性について調べた。P.is.RadAは,RecA/RAD51と同様に,ATP加水分解,一本鎖DNA結合,さらに相同的なDNA間でのストランド交換反応の活性を示した。興味深いことに,P.is.RadAのDNA依存性ATPase活性の温度依存性を調べたところ,そのアーレニウスプロットは75℃以上のときより高いという結果が得られた。さらに,一本鎖DNA結合能やDNA鎖交換反応も,75℃を境に顕著な増大を見せた。P.islandicumの最適生育温度が100℃であることと考えあわせると,P.is.RadAは75℃以上でDNA結合部位を含む領域のコンフォメーション変化を起こすことによって,生育温度でより高い触媒効率を発揮しているのではないかと考えられる。
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