研究概要 |
1.大核特異的なホロスポラ・オブツサが持つ標的核膜識別センサーが16キロダルトン、小核特異的なホロスポラ・ウンドゥラータのセンサーが13キロダルトンの細胞外膜に存在するリポ多糖であることを明らかにした。2種のセンサーに対するモノクローナル抗体を使って間接蛍光抗体法と免疫電顕で観察すると、各抗体が標的核膜と特異的に結合することが確認された。 2.ホロスポラは常に片方の末端に存在する特殊な構造部分で標的核膜を貫通する。宿主から単離した約3,400細胞の感染型ホロスポラ・オブツサの特殊な末端を顕微鏡下で約1ミクロンの長さを切り取り、これを電気泳動して銀染色すると2本のバンドが出現した。調整用電気泳動ゲルからこの分子量のゲル断片を切り取って内容物を抽出し、間接蛍光抗体法でアッセイして特殊な末端特異的モノクローオルを1種類作成することに成功した。 3.ホロスポラ・オブツサの2D-SDS-PAGEゲルから18種のスポットの部分アミノ酸配列を決定し、解読済みゲノム部分にORFがあるかどうかと既知タンパク質とのidentityの有無を調べた。その結果、ORFが見つかったのは3種のみ、ホモロジーが確認されたのは8種であった。ORFが3/18(17%)しか検出されないことは、宿主から輸入したタンパク質が多いことを示唆している。 4.ディファレンシャルディスプレー法で、ホロスポラによって発現が抑制される宿主遺伝子を12種、発現が増加する遺伝子を3種検出し、前者のうちの4種の遺伝子断片のシーケンスを行った。その1種は、真核細胞核で最初のコドン逸脱性の発見になったにもかかわらず機能不明の表面抗原遺伝子であった。
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