研究概要 |
ミトコンドリアを構成する蛋白質の殆どは核のDNAにコードされており細胞質において前駆体蛋白質として合成された後に、前駆体が持つミトコンドリアターゲティングを認識する細胞質因子によってミトコンドリア表面の受容体に運ばれ、さらに外膜と内膜とに存在する輸送装置(TOMおよびTIM複合体)によって目的のコンパートメントに輸送される。我々は2年の研究期間に以下のような成果を挙げることができた。 【1】疎水性の膜貫通領域(TMD)を持つミトコンドリア外膜と内膜の蛋白質が細胞質で合成された後にミトコンドリアへターゲティングされ、さらに目的の膜に挿入されて本来のトポロジーを形成する機構は全く不明である。我々はN-末アンカー型外膜蛋白質としてTom20を、またC-末アンカー型外膜蛋白質としてTom5を用いてターゲティングシグナルの特性を明らかにした。(1)Tom20:適度の疎水性を持つTMDとその直後の5アミノ酸領域内に存在する都合1個の塩基性アミノ酸がシグナルとして必須であり、TMDはSRPによって認識されるが下流の塩基性アミノ酸がSRP機能を阻害することによって小胞体への標的化が阻害され、結果的にミトコンドリアへのターゲティングが起こる(Kanaji et al.JCB2000)。 (2)Tom5:C-末のTMDとその直後の塩基性アミノ酸クラスター(3つの正電荷)が必須であり、さらにTMDから塩基性アミノ酸までの距離、ならびにTMDのα-ヘリクス形成傾向が重要な要素であることを明らかにした(Horie et al.,投稿準備中)。現在これら2種のシグナルを認識する因子の検索を続行している。 【2】ラットミトコンドリア外膜の輸送因子として、OM37(Maeda et al.,投稿準備中)、Tom20(Kanaji et al.,JCB2000)、Tom22(Saeki et al.,JBC2000)、Tom40(Suzuki et al.,JBC2000)、Tom70(Suzuki et al.,投稿準備中)のcDNAクローニングを行い、抗体を作成した後に輸送に関わる因子として詳細な機能解析を行った。
|