研究概要 |
消化管粘膜に獲得免疫機構の発動を必要としない自然免疫機構が存在することはよく知られているが,これまで自然免疫めエフェクターである抗菌ペプチドの実際の働きについては不明であった。われわれは,消化管抗菌ペプチドをマウスと炎症性腸疾患患者を含むヒトの両方で検討した。小腸Paneth細胞alpha-defensinの分泌をわれわれの確立した分離陰窩アッセイ系を用いて解析し,ワイルドタイプマウス,二次的defensin欠損マウスおよび生後一定期間Paneth細胞を欠くトランスジェニックマウスの比較検討から,マウスの腸管感染防御機構におけるその重要性を明らかにした。さらに,この研究結果をヒトに対して応用することによって,各種抗菌物質の発現と炎症性腸疾患の病態が関連している可能性を示すことができた。炎症性腸疾患における抗菌ペプチドの発現および機能に健常対照と異なる場合があることを明らかにした。ヒトにおけるPaneth細胞分泌の機序および調節因子に関する解析については,健常対照者における検討において顕著な進展がみられた。また,炎症性腸疾患患者での検討を開始した。本年度,本国際学術研究は各研究分担者の専門領域における先端的研究とそれぞれの研究結果の有機的統合により,大きく進展したと考えられる。国外研究分担者との研究分担は,本年度も相互に教室を訪問した際に研究実績を交換し,報告会および公開セミナーを行った。その上でさらなる研究計画方針を決定するという着実な分担研究を続行している。
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