研究概要 |
Bach1およびBach2は、いずれもクロマチン構造の制御に関わると予想されるBTB/POZドメインを有する。我々は原子間力顕微鏡を用いて、Bach1はこのBTB/POZドメインを介して多量体を形成し、DNAループ形成を行うことを明らかにした。従来のDNAに結合し転写を活性化する因子とは異なり、Bach1はむしろ制御領域の立体的構造の形成に関わる因子と位置づけられる。そこでさらに、Bach2のBTB/POZドメインに結合する因子をtwo hybrid法で検索し、新規因子MAZR(Myc-associated zinc finger protein-related factor)を発見した。このタンパク質は、N末端にBTB/POZドメインを、C末端には7回繰り返しのZn fingerドメインを有していた。このZn fingerドメインは転写因子MAZ(Myc-associated protein)のものと相同性が高く、実際MAZと同じようにG-richな配列を認識した。そこでMAZの標的遺伝子であるc-myc遺伝子を用いてレポーター解析を行ったところ、MAZRはMAZよりも非常に強く転写を活性化した。この高い転写活性化には、BTB/POZドメインを含むN末端領域が必須であった。しかしながら,GAL4DNA結合ドメイン融合系を用いて解析を行ったところ、N末端ドメインは転写活性化能を示さなかった。この結果は、MAZRは単なる転写活性化因子としてではなく,DNAの構造を変化させるようないわゆる"構造転写因子"として機能する可能性を示唆した。LCRやインスレーター配列では,G-richな配列が重要な役割を担うことが推測されている。このような制御領域においてBachやMAZRのようないわゆる構造転写因子の範疇に入るタンパク質が重要な役割を担っている可能性が考えられ、非常に興味深いものと思われる。
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