初年度は、骨格系についてMFH-1遺伝子とPax1遺伝子の関係を明らかにすることに焦点をあてた。その結果、MFH-1とPax1は硬節の腹側及び横側で共に発現していること、MFH-1が脊索依存性に発現すること、が判明した。また、MFH-1/Pax1ダブルノックアウトマウスでは、単独ノックアウトマウスよりさらに細胞増殖能が障害されていることが明らかになった。以上のことから、MFH-1とPax1は硬節細胞内で協調的に働き、脊椎骨の形成に関わっていることが明らかになった。次年度は、大動脈におけるMFH-1遺伝子とエンドセリン受容体A(ETA)の関係を明らかにすることに焦点をあてた。正常マウスにおける胎生期でのETAとMFH-1の発現、および、両ノックアウトマウスが同じ大動脈弓離断という症状を示すこと、からMFH-1とETAの間に上下関係があることが予測された。しかし、MFH-1とETAは互いに独立に大動脈弓血管の形成に働いていることが明らかになった。最終年度は、大動脈および骨格系における役割を検討した。まず、MFH-1/ETAダブルノックアウトマウスは胎生11.5日前後に心不全のために致死に至っていることが判明した。また、MFH-1遺伝子は骨が形成される少し前に最大の発現が起こり、骨分化が起こってしまうと発現が低下することが明らかになった。次に、マウス胎児の肢芽に骨形成因子BMPを含ませたビーズを移植して、MFH-1遺伝子の発現が変化するかどうかを観察したところ、BMPビーズの少し離れた場所でMFH-1遺伝子の発現が著明に増強することが観察された。このことから、BMPは直接的あるいは間接的にMFH-1遺伝子を制御していることが明らかになった。
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