人工関節周囲骨溶解機構に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11694240
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 荻野 利彦 山形大学, 医学部, 教授 (60109436)
• 研究分担者: 井田 英雄 山形大学, 医学部, 助教授 (40184600) ; 高木 理彰 山形大学, 医学部, 助手 (40241707)
• キーワード: 人工関節 / 生体親和性 / 骨溶解 / 弛み / 骨吸収 / 骨形成

研究概要

人工関節周囲に生じる骨溶解機構を解明するために、動物モデルおよびヒト検体を用いて、インプラント周囲に生じる生体反応について、形態学、生化学、分子生物学的手法を用いて、骨動態並びに肉芽組織の検討を行った。 (1)動物モデル:ラットの膝関節内の大腿骨遠位に骨孔を作成しセメントピンを刺入した。術後8週まで2週間ごとに関節内に平均3ミクロンと30ミクロンのHDP粒子を注入した。対照群として対側膝に血清のみを注入した。12週後に屠殺し、大腿骨及び関節包を採取し、インプラント・骨間の介在肉芽組織と関節包組織を作成観察した。Mφを主体とした介在肉芽組織の炎症反応は、3ミクロン群がより強い細胞性反応を示した。この骨の硬組織標本を作成して、共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察した結果、コントロール群では、インプラント周囲に僅かな新生骨形成とごく薄い線維性介在組織が観察された。HDP粒子注入群ではインプラント周囲骨の破骨細胞性骨吸収と旺盛な骨形成が観察された。Mφを主体とする肉芽組織近傍の骨組織には骨形成性ならびに吸収性の複雑な骨動態が存在することが明かとなった。 (2)ヒト検体を用いた検索:弛緩人工股関節周囲の骨組織周囲には、動物モデルと同様の旺盛な骨吸収、骨形成の反応が共存する複雑な骨動態が観察された。また介在部の肉芽組織には、非弛緩性の組織と比較して、MMP-1、-2、-3、-9、-13、-14、-15、-16、-17、Empperinの過剰発現が存在することが明らかとなった。本研究は、国際学術交流研究の一環として申請採択された。平成11年度は、ヘルシンキ大学からSirkku Niisslo、山形大学から、高木理彰、井田英雄が相互に研究施設を訪問し、共同研究実験、研究成果の討論、次年度以降の研究計画の打ち合わせを行った。

研究成果

• [文献書誌] Konttinen YT: "The expression of laminins and their integrin receptors in different conditions of synovial membrane and synovial-like interface membrane."Annals of the Rheumatic Diseases. 58. 683-690 (1999)
• [文献書誌] Konttinen YT: "Analysis of 16 different matrix metalloproteinases(MMP-1 to MMP 20) in the synovial membrane."Annals of the Rheumatic Diseases. 58. 691-697 (1999)
• [文献書誌] Ishii M: "Periprosthetic bone remodeling in rat femur model."Transaction, SIROT. 99. 54-55 (1999)
• [文献書誌] Takagi M: "Analysis of periprosthetic bone remodeling in loose hip joints."Transaction, SIROT. 99. 431-433 (1999)
• [文献書誌] Takagi M: "Analysis of membrane type-1 matrix metalloproteinase, matrix metalloproteinase-2; and tissue inhibitor of metralloproteinase-2 in loose hip periprosthetic connective tissues."Transaction, ORS. 45. 893-894 (1999)
• [文献書誌] Santavirta S: "Studies on host response t orthopaedic implants and biomaterials."J Long-Term Effects Med Implants. 9. 67-76 (1999)