研究課題/領域番号 |
11694240
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
荻野 利彦 山形大学, 医学部, 教授 (60109436)
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研究分担者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
井田 英雄 山形大学, 医学部, 助教授 (40184600)
高木 理彰 山形大学, 附属病院, 助教授 (40241707)
小林 真司 山形大学, 附属病院, 助手 (60312740)
武井 寛 山形大学, 附属病院, 助手 (40292437)
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キーワード | 人工関節 / 生体親和性 / 骨溶解 / 弛み / 骨吸収 / 骨形成 |
研究概要 |
弛緩人工股関節の骨インプラント境界面には、Cathepsin K, TRAP陽性の破骨細胞が骨吸収窩を形成し、充分に石灰化した骨基質の分解を行っている組織像が確認できた。ここから得られた関節液をマウス骨髄培養系に添加すると、TRAP陽性の破骨細胞の誘導が観察された。破骨細胞誘導能は、関節リウマチの関節液より高く、この形成は、OPGの添加によって完全に阻害された。弛緩人工股関節の骨インプラント境界面には、破骨細胞性骨吸収面以外に、マクロファージ系CD68陽性の細胞が存在し、cathepsin K, TRAPも共に陽性だった。この境界面は、骨吸収窩を形成せず、骨基質の脱灰を示唆する所見が得られた。骨インプラント境界面のpH測定では、弛緩人工股関節の骨表面のpHが生理的中性域から酸性域に有意に低下していた。弛緩人工股関節の関節液は、関節リウマチよりも旺盛なOCIF-OPGシステムを介した破骨細胞分化・誘導能を有し、インプラント周囲の病的骨吸収に関与している。これは、関節液がマウス骨髄細胞培養系で旺盛な破骨細胞形成能を有し、破骨細胞形成阻害因子であるOPGの添加によって完全に阻害されたこと、硬組織形態学、免疫組織化学的に、インプラント周囲の骨組織に、骨吸収窩を形成し、cathepsin K, TRAP陽性の破骨細胞が豊富に存在していた所見から裏打ちされると思われる。一方、骨吸収窩の形成のないマクロファージ系の細胞が、骨組織に接し、脱灰を行っている所見が観察された。骨インプラント境界面のpHが生理的中性域から酸性域に低下していたこと、またマクロファージ系の細胞が酸性領域で骨基質分解能をもつcathepsin K陽性であったことから、破骨細胞への完全な分化と骨吸収窩の形成がなくても、病的骨吸収が生ずる可能性も示唆された。
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