我々が同定した主に脳に発現した新奇な受容体LR11の受容体機能解析、特にその動物モデルを用いた生体機能を明らかにすることは、動脈硬化およびAlzheimer病の病因解明に道を開く可能性を強く持つと共に、全身の脂質代謝の解析に比較し遅れていたLDL受容体遺伝子ファミリーの血管構築細胞および神経細胞での役割を解明することが期待される。本年度は、多機能受容体群であるLDL受容体遺伝子ファミリーの生体、特に動脈硬化における受容体機能の同定と、その幅広い種間で極めて高く保存された分子構造の生物学的意義を分子生物学的および細胞生物学的手法を用い明らかにした。動脈硬化モデルにおいて内膜肥厚をともなう血管壁の平滑筋細胞に特異的発現することから、動脈硬化進展に重要な役割を有する可能性がある。さらに培養細胞を用いた研究から、LR11は、発生過程およに病的プロセスにおける細胞増殖および分化に関与することが推測された。今後、血管壁構築細胞における細胞間インターラクションに加て、神経細胞および腫瘍細胞におけるLR11の特異的な発現調節機能を明らかにすることが、LDL受容体遺伝子ファミリーの多機能性の解明に貢献すると考えられる。
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