研究課題/領域番号 |
11694251
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
脊山 洋右 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90010082)
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研究分担者 |
内島 泰信 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90272426)
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
久保田 俊一郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00260480)
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キーワード | ハーダー腺 / ゴールデンハムスター / 脂肪酸合成 / アンドロジェン / 核内受容体 / アシルCoA脱水素酵素 |
研究概要 |
1.研究の背景:ハーダー腺は眼窩内にあって脂質を開口分泌している。ゴールデンハムスターの分泌脂質はアルキルジアシルグリセロール(ADG)であるが、その組成には著しい雌雄差がある。雄のADGでは直鎖の脂肪酸しか含まれていないのに、雌のADGでは分枝鎖脂肪酸が多量に含まれていることがわかった。 2.研究結果:これらの炭素源は分枝鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンであるが、その代謝過程の二種類のアシルCoA脱水素酵素(IVDとSBCAD)が活性を持っている雄ではアセチルCoAとプロピオニルCoAがつくられて偶数鎖及び奇数鎖の脂肪酸の合成が行われる。雌ではこれらの酵素が発現していないので、中間代謝産物の分枝鎖CoAがたまって、分枝鎖脂肪酸が合成されることになる。雄を去勢するとIVD、SBCAD活性が消失して雄型のADGになり、雌および去勢雄にテストステロンを投与すると両酵素活性があらわれて雄型のADGを分泌するようになる。 3.考察:以上の結果からゴールデンハムスターのハーダー腺では二種類のアシルCoA脱水素酵素が細胞核内にあるアンドロジェン受容体により発現調節が行われて、酵素の発現調節を介して分泌される脂質組成に雌雄差が顕れたことが明らかになった。ハーダー腺の脂質は様々な役割を果たしているが、ゴールデンハムスターではフェロモン作用がこの脂質によってもたらされていることが示唆される。雄のADGでは直鎖で奇数および偶数の脂肪酸が含まれ、その相対比によって指紋のように個性を発揮することができる。雌では分枝鎖脂肪酸の組合せにより個性を現わすことができる。フェロモン受容体を明らかにすることが今後の課題である。
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