研究概要 |
本研究の目的は単純ヘルペスウイルス(HSV)の潜伏感染からの再活性化機構を解析することである。ICP0はHSVの遺伝子発現制御および潜伏感染制御の両方を制御している重要な因子である。我々は、既にICP0が翻訳因子EF-1δおよび細胞周期制御因子cyclin D3と相互作用することを見出している(J.Virol.71:1019,1997;J.Virol.71:7328,1997)。本年度、Cyclin D3と相互作用するICP0の最小部位を同定したところ、199番目のアスパラギン酸であることが明らかになった。そこに部位特異変異を導入した組み換え変異ウイルスを作製し、その性状をマウス動物モデルを用いて解析したところ、ICP0とcyclin D3の相互作用はHSVの生体内での増殖および神経侵襲性に関与していることが明らかになった。また、酵母を用いたTwo-hybrid screeningによりICP0と相互作用する宿主細胞因子として転写因子MOP3およびペントースリン酸系路の主要酵素であるTransketolaseを同定した。これらの相互作用はGST-pull down法にて確認された。これらの宿主細胞因子が相互作用するICP0のドメインはエクソンIIのC末領域であることが明らかになった。さらに、MOP3を過剰発現する組み換えHSVを作製した。また、EF-1δのリン酸化がウイルス特異プロテインキナーゼであるUL13によって引き起こされることを明らかにした。さらに、そのリン酸化がヘルペスウイルスで普遍的に保存された重要な現象であることを明らかにした。
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