(1) 平滑節Rhoキナーゼの精製と性状解析 平滑節精製RhoキナーゼはSDS電気泳動上160kDの蛋白質で、部分アミノ酸シークエンス解析よりROKαに属することが判明した。Rhoキナーゼはミオシンホスファターゼ(MP)のMYPT1サブユニットを燐酸化し、MP活性はRhoキナーゼによるMYPT1のチオ燐酸化により抑制された。また、平滑節Rhoキナーゼはミオシン(20kD軽鎖のSer19)を燐酸化し、この燐酸化によりミオシンのアクチン活性化ATPaseが上昇した。Y-27632及びstaurosporineによりRhoキナーゼ活性は強く阻害され、そのKi値は各々0.09、0.02mMであった。平滑節RhoキナーゼはGTPrS・RhoAにより1.5〜2倍、トリプシン処理によりRhoA非依存性に5〜6倍活性化された。さらに数10mM程度のアラキドン酸は、Rhoキナーゼ活性をトリプシン処理で認められる最大値までRhoA非依存性に活性化させた。 (2) Rhoキナーゼの燐酸化によるMP活性制御の分子機構 Rhoキナーゼの燐酸化よるMP活性の阻害は、主に最大酵素反応速度(Vmax)の低下によるものであった。ROKはMYPT1のC端側1/3のフラグメントに存在するスレオニン残基(Thr)を燐酸化した。そこで、この領域に存在するThr残基をアラニンに置換したミュータントを作製し、それら燐酸化レベルを検討したところ、695番目(Thr695)と850番目のThrが主なる燐酸化部位であることが明らかになった。これらの部位の燐酸化のMP活性に与える影響を検討したところ、Thr695の燐酸化が活性阻害に関与すると考えられた。Thr695の燐酸化を特異的に認識する抗体により、Rhoを活性化させる刺激(LPA)により培養線維芽細胞でThr695の燐酸化レベルの上昇が確認され、この燐酸化はROK阻害剤Y-27632により阻害された。
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