1.平滑筋Rhoキナーゼ(ROKα isoform)を精製し、平滑筋Rhoキナーゼがミオシンホスファターゼ(MP)をリン酸化しMP活性を低下させること、直接ミオシンのSer19をリン酸化すること、アラキドン酸によりRho非依存性に活性化されることを明らかにした。活性阻害を引き起こすMPのリン酸化部位はMPを構成するMYPT1サブユニットのThr695であり、この部位のリン酸化を特異的に識別する抗体を作製した。この抗体により、培養血管平滑筋細胞においてRhoAを活性化するアゴニスト刺激により、MYPT1のThr695がRhoキナーゼ活性依存性にリン酸化されることを明らかにした。 2.リン酸化依存性MP阻害蛋白質であるCPI-17は、Rhoの標的蛋白質であるRhoキナーゼやPKNによってもリン酸化されMP活性阻害を示すことを明らかにした。 3.MYPT1遺伝子の5'flanking resionの解析を行い、MYPT1遺伝子はハウスキーピング遺伝子であることを解明した。 4.MYPT1ノックアウトマウスを作製したが、このマウスは胎生致死であり、MYPT1が胎児発育段階で重要な機能を有していることが明らかになった。今後、胎児の解析を行い致死になる原因を解明するとともに、遺伝子改変が成体で誘導できる系を用いて研究を続けていく予定である。 5.ラット高血圧モデルにおけるRho/Rhoキナーゼシグナルに関連する分子の動態を検討したところ、高血圧においてはRhoAの活性化が大動脈で共通して認められ、Rhoキナーゼの阻害剤が著名な降圧作用を示すことより、RhoAの活性化に続くRhoキナーゼの活性化が高血圧病態に関与していることが明らかとなった。
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