研究概要 |
本研究は網膜症発症や単純性網膜症など網膜症初期変化の分子機構を明らかにし、網膜症そのものを予防、根治する治療法の開発を目指すものである。網膜症の初期変化である血管透過性、血管増殖、血栓形成において重要であると考えられる血管内皮増殖因子(VEGF)やアンジオポイエイチン(Ang1,2)などの調節因子について検討した。網膜症眼でのレニン-アンジオテンシン系の役割が注目されているが、周皮細胞においてAIIがVEGFの分泌刺激となること、内皮細胞ではVEGFSR1やAng2を増加させること、これらの作用はAT1受容体,PKCを介しており、VEGFのpromoterのAP-1領域を介するものであることを見出した(Otani,et al.Circ Res1998;82:619,Diabetes in press,IOVS 2000;41:1192)。この結果よりAIIやAT1受容体、AP-1の抑制により網膜症初期のVEGFやAng2を制御し網膜症の発症や初期変化を阻害できる可能性が示唆された。網膜症初期変化のもう一つの原因として周皮細胞の脱落が血管透過性亢進や血管増殖の引き金となることがよく知られている。このような周皮細胞の解離を起こすと考えられるAng2はストレプトゾトシン糖尿病ラットや虚血モデルにおいて選択的に増加することが見出された(Oh et al,J Biol Chem 1999;274:15732-15739他)。また初期網膜症における白血球の役割が注目されているが、PKCβ選択的阻害により白血球の浸潤を阻害可能であることを見出した(Nonaka,et al IOVS2000;41:2702-2706)。以上の結果よりAIIやAng2、さらにその発現機構を制御することによりVEGFや周皮細胞の脱落を阻害して、網膜症初期変化を抑制できる可能性が示唆された。
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