研究課題/領域番号 |
11694268
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 紘一 京都大学, 医学研究科, 教授 (20115877)
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研究分担者 |
木内 哲也 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40303820)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252449)
猪股 裕紀洋 熊本大学, 医学部, 教授 (50193628)
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キーワード | 小腸移植 / 拒絶反応 / 高解像度内視鏡 / 免疫組織染色 |
研究概要 |
本年度の実験研究は、有色ブタをドナー、白色ブタをレシピエントとした同所性小腸移植を行い、移植小腸粘膜の高解像内視鏡検査と移植小腸の病理組織学検査(特殊免疫組織染色)による拒絶反応の早期診断の研究を行った。拒絶反応のごく初期ににおける粘膜の変化は軽微であり、通常の内視鏡検査では変化をつかまえられない。しかし、高解像内視鏡検査では、絨毛丈の低下と単位面積あたりの絨毛数の減少の所見が得られ、拒絶反応の初期の段階の診断に非常に有用であることが判明した。これらの変化は病理組織学的にはクリプト細胞のアポトーシスが散見される軽微な変化と一致していた。さらに特殊免疫組織染色を行うことによって、アポトーシスが見られる前に、粘膜上皮のアポトーシス誘導酵素caspaseの陽性、浸潤リンパ球のFasL、CD4、CD8、CD56、CD20、CD25などの陽性所見が、さらに軽微な拒絶反応の初期の段階の診断に有用である可能性が示唆された。 上記の実験成果を、生体小腸移植症例(本邦で3例目)と、本邦で初めての脳死小腸移植症例に応用した。高解像内視鏡検査と特殊免疫組織検査により、臨床小腸移植においても拒絶反応を極めて早期に診断することができた。結果として、免疫抑制療法の微調整により拒絶反応を安全にコントロールすることができたため、感染症を合併することなく上記2症例の経過は順調である。2症例とも小腸移植後に明らかな拒絶反応を経験することなく、移植された小腸からの栄養吸収は良好であり、中心静脈栄養から完全に離脱できている。本年度の研究成果により、さらなる臨床小腸移植の成績向上が期待できる。
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