研究概要 |
糸球体障害には遊走してくる単球・マクロファージとメサンギウム細胞の応答によるIL-1,TNFα,TGF-βなどの増殖因子、サイトカインの産生増加が重要であり、これを抑制することにより腎糸球体障害を軽減できる可能性がある。IL-10はマクロファージから産生されるTNFαや酸素ラジカルの放出を抑制する最も強力な因子である。このIL-10をin vivoで発現させる遺伝子導入系を開発し、実験腎炎モデルラットでその抗蛋白尿効果を検討した。まず、レトロウイルスベクターにヒトIL-10遺伝子を組み込み、培養メサンギウム細胞に導入した。このメサンギウム細胞でIL-10が発現することを確認した後、抗基底膜抗体糸球体腎炎モデルラットの腎動脈から注入した。その結果、メサンギウム細胞を導入した腎臓から単離した糸球体でのIL-10の発現が認められ、尿蛋白も減少した。この方法ではメサンギウム細胞が糸球体毛細血管内腔にとどまり、非生理的なため筋肉内にベクターを注入し、全身的にIL-10濃度を上げることより糸球体腎炎に対する効果を検討した。IL-10遺伝子発現ベクターはpCAGGSを用いた。HVJ-リポソームを用いて筋肉に導入したこのベクターからIL-10が産生され、尿蛋白が抑制されることを確認した。この結果は、IL-10が糸球体腎炎の進展を抑制する可能性があることを示唆するものである。
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