研究概要 |
Calbrainの生理学的機能を解析する目的で,ラット脳の海馬のスライスを用いてテタヌス刺激により長期増強(long-term potentiation:LTP)を作成し解析を行った。 1 LTPを形成した海馬スライスにおいてCalbrainの発現量を測定したところ,2時間目ですでに約40%,3時間目で約50%,4時間目では約70%と時間依存的に減少し,CalbrainはLTPの形成と共に急速にダウンレギュレートされることが判明した。 2 長期抑圧(long-term depression:LTDを形成した海馬スライスにおいてはCalbrainの発現量に変化が認められなかった。 3 LTP海馬スライスにおいてCa^<2+>/calmodulin-dependent protein kinase II(CaMK2)の活性は2時間目で約20%,4時間目で約40%高かった。一方calcineurinの活性には変化がなかった。 4 CaMK2の自己リン酸化はLTPスライスでの方が,LTDスライスに比べて高かった 5 apo並びにcalcium saturatedのcalbarainを使用して構造解析を行い、EF-hanc helix-loop-helixタイプの構造とカルシウムイオンによる構造の変化を解明した。 以上の結果から、calbrainは2つのEF-hand構造を持つカルシウム結合蛋白質であり、calmodulinとは競合的にCaMK2の活性を抑制するが,長期記憶増強の形成と共にcalbrainの発現量が減少することで,CaMK2に対する抑制効果が減少するためその結果としてCaMK2の活性が上昇する機構が想定された。長期抑圧に関してはcalbrainには変化がなく,直接的な関与はないであろうことが推察された。
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