研究概要 |
分子量が130kDの新規のイノシトール1,4,5-三リン酸[Ins(1,4,5)P_3]結合蛋白質を見い出し、p130と名付けた。p130はプレックストリン相同領域(PHドメイン)を有し、ここでIns(1,4,5)P_3やホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸[PtdIns(4,5)P_2]と結合する。この蛋白質の機能を解明するために安定的にp130を発現するCOS-1細胞株を作製した。細胞内のp130は同じくPHドメインを持つホスホリパーゼC-δ(PLC-δ)とは異なり決して細胞膜に局在することなく、細胞質中に均一に分布していた。ブラジキニン(Bk)や上皮成長因子(EGF)刺激に伴う細胞内Ca^<2+>濃度変化を測定したところ対照に比し、Bk刺激によるCa^<2+>反応の減弱化が認められた。EGF 刺激の場合も基本的には同じ結果が得られた。この原因として二つのことが考えられる。発現したp130が細胞膜の内側にあるPtdIns(4,5)P_2に結合して、PLC活性化による加水分解を抑制したか、あるいは、PLC活性化によって生成したIns(1,4,5)P_3がp130によって結合され、小胞体上の受容体に結合する量を減らしたためか、である。これを区別するため、Bk刺激によって細胞内に生成したIns(1,4,5)P_3を定量した。刺激前の量はp130を過剰発現した細胞のほうがむしろ多く、刺激に伴って生成するIns(1,4,5)P_3量に対照との相違は認められなかった。この結果は後者の可能性が高いことを支持している。したがって、p130は細胞内Ca^<2+>反応のnegative regulatorとして働いている可能性が考えられる。そのことにより、種々の細胞機能の抑制に関わっている可能性がある。
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