研究分担者 |
MATILDA Katan 連合王国癌研究所, チェスタービーティーラボラトリー, 主任研究員
竹内 弘 九州大学, 歯学研究院, 助手 (70304813)
兼松 隆 九州大学, 歯学研究院, 助教授 (10264053)
KATAN Matilda Chester-Beatty Lab, (UK) Principle Investigator
|
研究概要 |
イノシトール1,4,5-三リン酸(Ins(1,4,5)P3)はカルシウムシグナリング系の重要な一翼を担っている。我々は分子量130kの新しいIns(1,4,5)P3結合蛋白質(p130またはPRIP1)を見い出した。本分子は1,096個のアミノ酸よりなり、95-850領域はホスホリパーゼC-delta(PLC-delta)と類似しているもののPLCとしての酵素活性は認められなかった。今回、PRIP1の細胞内での役割を明らかにすることを目的とし、種々の受容体刺激に伴う細胞内Ca2+濃度変化、Ins(1,4,5)P3産生に及ぼすPRIP1の影響を調べ、PRIP1はIns(1,4.5)P3を介する情報伝達の負の調節因子として作用することを示唆した。また、イーストツーハイブリッド系によりPRIP1と結合する蛋白質を探したところ、gamma-アミノ酪酸(GABA)受容体に結合する蛋白質、GABARAPと蛋白質脱リン酸化酵素(PP1)に結合することが分った。そこで試験管内での実験系により、それぞれの結合を確認するとともに、それらの結合が生体内でどのように役立っているかを解明するためにPRIP1のノックアウトマウスを作製した。まずGABA受容体情報伝達経路に対する影響を調べた。PRIP1-/-マウスではGABA誘発性Cl-電流のZn2+による抑制効果が完全に消失していた。次にベンゾジアゼピン系薬剤に対する影響を調べた。PRIP1-/-マウスの海馬細胞にジバゼパムを作用させたところGABA誘発性Cl-電流の増強効果が抑えられ、抗不安効果を評価するプラス迷路を用いたPRIP1-/-マウス行動解析実験においてもジバゼパム作用効果が減弱していた。したがってPRIP1は、GABA受容体情報伝達経路においてGABARAPとPP-1と共役してGABAシグナルを調節している可能性を示した。
|