研究概要 |
本研究ではポジショナルクローニング法とトランスジェニックマウス技術を結びつけ、巨大ゲノムDNA導入によって突然変異を機能的にレスキューする手法を確立し、これを利用して突然変異責任遺伝子を同定、単離することを目的とする。対象とするのはマウス17番染色体のt-コンプレックスにマップされる発生致死変異であるtw5変異、T変異、神経系機能に関するqk(quaking)変異、或いは9番染色体にマップされる体節・骨形成に関与するtail kinks(tk)変異である.確立したBAC(細菌人工染色体)導入マウス作製技術を利用し,今年度は実際に複数の発生異常突然変異のレスキュー実験を行った. qk変異に関する責任候補遺伝子qkIをを含むBACを導入したところ,qkIトランスジーンの発現が認められ,それにともない表現型の回復が認められた.我々はtw5、tkの領域をカバーするBACコンティグを作製した.tk遺伝子座ではD9Mit9を中心とした約500kb、4種類のBACクローンでカバーされる領域に原因遺伝子が存在することを見出した.その内の1種のBAC導入によって表現型の回復が認められた.現在,そのBACに含まれる遺伝子を探索している.tw5ではH-2KからD17Mit147までの約1000kbのゲノム領域に原因遺伝子があり、その領域をBACによってクローニングした.またこのゲノムDNA中に、糖鎖合成酵素である,α1,3-Fucosy1transferase IX(mFuc-TIX),他に機能の未知である遺伝子を複数発見した.現在,これらの遺伝子を含むBACクローン導入マウスを行っている. 以上のように,BACトランスジェネシスは変異責任遺伝子の同定,機能解析に大変有効であることが実証された.
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