研究概要 |
本研究は、現在臨床で大きな課題となっている血中半減期について、その顕著な延長を試み、アルブミン製剤の大幅な消費量削減の目的達成のため、国際共同研究を推進するものである。以下に得られた知見を要約する。 1)発現ベクターpHIL-D2にL10(シグナル配列)及びポリA配列を含む変異を施したHSAcDNA(K199A,K525A)を挿入した。この発現ベクターでP.Pastoris(GS115株)を形質転換し、BMMY培地で4日間培養後、培地上清より硫安分画(60%,pH4.4)で濃縮、粗精製を行い、ブルーセファロースCL-6Bに付し、変異HSA(K199A,K525A)の精製を行った。 2)精製した変異HSA(K199A,K525A)の構造特性について、遠紫外及び近紫外領域CDスペクトル、抗HSAポリクローナル抗体を用いて検討した。その結果、二次構造、三次構造及び抗体の認識性に血漿由来HSAと有意な差は観察されなかった。 3)変異HSA(K199A,K525A)は化学的安定性、熱安定性、薬物輸送性及びエステラーゼ活性において血漿由来HSAと有意な差は観察されなかった。 4)^<125>I-K199A-HSAのラットでの体内動態について検討した結果、血漿中濃度推移は2相性を示し、消失相(β相)から算出した半減期は約30時間であり、血漿由来HSAと同様の体内動態特性を示した。 5)オーフス大学Kragh-Hansen博士は平成11年10月23日〜11月7日の2週間余り熊本大学に滞在し、博士の訪問前に熊本大学で得られたアルブミン変異体の動態特性や生物学的性質について討議すると共に、今後の変異化について討議を重ね、来年度目標達成のために再来日して熊本大学にて長期にわたって研究を実施することを確認した。
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