研究概要 |
本研究は、この分野ですでに実績をあげていたタルト大学のMetspalu博士と共同で、リボソームタンパク質(RP)遺伝子群をターゲットとしたチップを開発し、これを通して(1)チップ作製のための技術を確立する。(2)実際の疾患へ適用することにより、我々の仮説である「疾患とリボソームとの関連」を解明する。ことを目的とした。 [研究成果] ヒトRP遺伝子を標的として、以下の2つのタイプのDNAチップを作製した。 1.RPex(Ribosomal Protein gene expression)チップヒトリボソームの小サブユニットを構成するタンパク質遺伝子(33種類)に特異的なプローブDNA(平均250bp)をPCRで作製し、エポキシで表面を活性化したガラススライドに固定した。これを用いて、ハイブリダイゼーション法によりHeLa細胞の熱ショック前後で発現の変動を調べた結果、特に大きな変化は見られなかった。しかし、胎盤のRNAをコントロールとして比較すると4つのRP遺伝子、RPS17,RPS18,RPS24,RPS27で違いが見られた。このことより、培養がん細胞におけるRP遺伝子の発現プロファイルの変動が示唆された。 2.RPmu(Ribosomal Protein gene mutation)チップ リボソームの小サブユニットを構成するタンパク質遺伝子に特異的なオリゴDNAを合成し、RPexチップと同様に、表面処理をしたガラススライドに固定した。次に、逆転写反応で合成したcDNAプールを鋳型としてチップ上でプライマー伸長反応を行った。その結果、80%以上のプライマーが正常に働き、正確な塩基配列を読みとることができた。 これらの結果から、今後はこの2つのチップを用いることにより、mRNAレベルでのRP遺伝子の発現および疾患におけるRP遺伝子の変異をきわめて効率的に解析することが可能になると考えられる。
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