研究課題
自己複製能と多分化能をもつ造血幹細胞は遺伝子治療の重要な標的組織のひとつであるが、これに効率よく遺伝子を導入するための技術は確立していない。本年度は、造血幹細胞遺伝子治療の良い適応疾患であるX連鎖慢性肉芽腫症(X-CGD)について、我が国において臨床試験を早期に開始するために、内外の臨床遺伝子治療研究の実状や問題点を検討した。米国においてX-CGD遺伝子治療第一相試験を開始したIndiana大学のMary C.Dinauer博士を招聘して臨床試験の進捗状況についての講演会を開催し、本疾患に関する国内の研究者とも情報交換を行った。また、X-CGDに関して東京大学・長崎大学・熊本大学の共同研究者を訪問し、相互に供与している細胞・動物・抗体・DNAクローンなどについて研究成果の交換と打ち合わせを行った。さらに、わが国が独自の遺伝子治療臨床研究を進めていくために必要な大型動物実験施設の整備、臨床グレードの遺伝子治療ベクターの検定および大量供給体制の確立についての情報交換を行った。海外での活動としては、米国遺伝子治療学会・米国血液学会に参加し、造血幹細胞への遺伝子導入・幹細胞制御などの研究成果を発表するとともに、遺伝子治療の基礎研究および臨床応用全般の情報収集と各国研究者との意見交換を行った。またIndiana大学に設置されている臨床グレードレトロウイルスベクターの検定・供給施設(National Vector Laboratory)ならびに造血幹細胞遺伝子治療ユニットを視察し、自治医科大学に新設した移植用血液細胞プロセシング室整備の参考とした。
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