本研究はT細胞が機能的な細胞に分化するような活性化シグナルと無反応状態を誘導するようなシグナルとがどのように異なるかを解析することにより、末梢における自己寛容をシグナル伝達の面から理解することを目的として開始した。まず、これまでに明らかにしたシグナル伝達モチーフ(ITAM)に見られる2ケ所のYxxLモチーフのシグナル伝達系における機能を検討するために、様々な変異を導入したITAMを持つキメラ分子を発現する細胞株を作製した。変異モチーフを持つキメラ分子を介して刺激した際のシグナル伝達を検討し、2ケ所のYxxLモチーフのうち、N側のモチーフがカルシウムイオンの動員、ERKキナーゼやZAP70キナーゼの活性化に必須であること、逆にC側のモチーフ、特にロイシンがこれらの活性化経路に必須ではないことを明らかにした。一方、JNKキナーゼの活性化はN側、C端側のどちらの変異体においても観察され、JNKキナーゼの活性化経路がYxxLモチーフに依存しない可能性が示唆された。今後JNKキナーゼの活性化経路をさらの詳細に検討する予定である。
|