本研究は旧国際学術共同研究によるものであり、研究費は渡航費のみという条件付であったが、数回に亘る相互訪問が行われ、下記の成果が得られた。 緑内障は、眼圧上昇による房水流出障害によって、引き起こされる。通常、人の眼圧は8〜18mmHgの間に保たれている。この値が21mmHg以上になると緑内障と診断される。若し人の眼が一定の圧力以上に上昇すると、通常の眼圧値になるまで自発的に房水が流出し、その後は、その値を保ち続ける機能を持つ移植デバイスが必要となってくる。 そこで、我々はポーラスPTFEに着目して、研究を行った。ポーラスPTFEは、多孔質構造のため優れた気体透過性を有している。しかし、ポーラスPTFEは撥水性を有するため、水圧を高くしない限り水を通すことは出来ない。平成11度は内孔径が10ミクロンのポーラスPTFE内孔に親水基を置換し、無圧水でも流出させる事に成功した。しかし、一般に内孔径が大きくなると材質が脆くなる。この欠点を回避するには、低い水圧で水を通し、かつ、内孔径が小さい材料を作りだす事である。そこで平成12年度は内孔径3ミクロンの材料内部を親水性に改質し、水圧を自発的に制御可能な材料を開発した。さらに、生理食塩水を使った透過流量測定の結果、未処理のものだと300mmHgの加圧を加えても透過しなかったポーラスPTFEが、レーザーショット数15mJ/cm^2、2000shotのときに20mmHgの加圧で生理食塩水が透過出来るようになった。また、OH基の置換密度の割合が透過量に依存しているのもわかった。さらに房水が正常圧力の上限20mmHg以上になると流出が始まる為の処理方法が見出された。この実験結果は、この材料が眼圧制御弁として使える可能性を示唆するものである。
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