研究概要 |
ヒトの第6染色体6p21.3領域に位置するHLA領域と相同性を有する遺伝子が多数みいだされるヒト第1染色体1q21-25領域のゲノム構造をHLA領域と比較、解析することにより、MHCの進化の起源と進化の過程を解明することを目的として、まず前年度に引き続き、HLA領域と相同性を有する領域の一つである第1染色体1q21-22領域のCD1遺伝子群周辺1.1Mbの詳細なシークエンス解析をおこなった。その結果、前年度に報告した10個の既知発現遺伝子(CD1D-CD1A-CD1C-CD1B-CD1E-SPTA1-MNDA-IFI16-FY-FCER1A)の他に、新しくマッピングされた2個の発現遺伝子(AIM2とBL1A)、12個の発現可能な構造(ELL2-homおよび11個の嗅覚レセプター遺伝子)、17個の偽遺伝子(9個の嗅覚レセプター遺伝子,RPS10,KIAA0696,RB1,HMG14,kinectin,PIG8,HSPCAL1,HRAD1)の合計41個の遺伝子が同定された。特に12個の発現遺伝子に焦点を絞ると、遺伝子密度は1遺伝子/95kbであり、1q21-22領域はHLA領域と比較すると極めて遺伝子密度の低い領域であることが明らかになった。 ついで、染色体重複直前のゲノム構造を保持する頭索動物ナメクジウオにおけるMHC相同領域のシークエンシング解析をおこなった。その結果、これらの総塩基数は350,270bpで、このうちに32個の遺伝子の存在が予測された。これらの遺伝子のうち、14個(RING3,h-Rev107-like,RXR,NEU-like,p44 protein,Notch,Selectinなど)の遺伝子については、上記のMHC領域あるいはMHC相同領域上に存在した。このように、ナメクジウオはMHC領域の構造を保持していることから、相同性をしめすヒト染色体領域の構造解析をおこなう上で有効なモデル動物であることが示唆された。
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