研究概要 |
我々は平成11年度の計画に従い1)μ-オピオイドレセプターと特異的に結合するピラジノン誘導体を開発する、2)μ-オピオイドレセプターに非常に特異的なエンドモルフィン-1(Tyr-Pro-Trp-Phe-NH_2)、2(Tyr-Pro-Phe-Phe-NH_2)の構造(J.E.Zadina et al.,Nature,386,499-502(1997))を基にした新しいオピオイドミメティクスを開発する研究を実施した。この研究は生体内における重要な役割が示唆されたμ-オピオイドレセプターに対する特異的アゴニストおよびアンタゴニストを開発し、μ-オピオイドレセプターを介した痛みの制御物質開発に繋げる事を目的としている。特に癌患者のquality of life(QOL)の向上に貢献したい。以下に、平成11年度の研究成果を記す。 (1)ピラジノン環を含むアミノ酸に鎮痛活性発現に必要なチロシンとフェニルアラニンを結合したエンケファリン誘導体を合成したがオピオイドレセプター結合活性を示さなかった。ピラジノン環を鋳型とし2分子のチロシンを導入した化合物にμ-オピオイドレセプター特異的結合性を見出した。 (2)エンドモルフィンの構造活性相関を検討し、Tyr-Pro-Phe-NH_2がμ-オピオイドレセプター結合性を示す最小単位である事を明らかにし、その配列を基に誘導体を合成しエンドモルフィンに近い活性を示す化合物を得た。 (3)1)2)で得られたリード化合物のTyrを2,6-dimethyltyrosine(Dmt)に置換する事によりさらに強力にμ-オピオイドレセプターに結合する化合物を得た。これのうちからμ-オピオイドレセプターに対してはアゴニストとなりδ-オピオイドレセプターに対してはアンタゴニストとなる興味ある化合物を得、今後の研究展開に方向性を与える事が出来た。これら化合物を二機能性オピオイドリガンドと命名した。
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