研究概要 |
出芽酵母のDpb11は、タンパク質問の相互作用に働くBRCT(BRCA1 C-Terminus)ドメインを4つ持ち、染色体DNA複製と細胞周期チェックポイントに関与している。荒木は、Dpb11がDNAポリメラーゼε及びαの複製開始領域への結合に必要であることを明らかにした。また上村・荒木は、DPb11の機能を知るため、Dpb11と相互作用するSld(Synthetic lethal with dpb11-1)1〜6を分離している。このうち、Sld3はSld4/Cdc45と共に働き、S期初期に活性化される複製開始領域にはG1期から結合していることを見つけている。本年度はこの解析を進め、1)Sld3とCdc45が複合体を形成することが、それぞれのタンパク質が複製開始領域に結合するために必要であること、2)Sld3,Cdc45の複製開始領域への結合が、複製開始領域の解離に必要であること、を明らかにした。荒木は、秋と冬2度にわたりにCdc45の研究を精力的に行っているJ.Diffleyを英国に訪ね、この機構についてお互いの考えを討議し、論文にまとめた。また、荒木は秋にP.Plevaniの研究室をイタリアに訪ね、DNAポリメラーゼα研究の現状について討議を行った。さらに、秋にはDpb11のチェックポイント機能について興味を持つ、N.Lowndessを英国より招聘し、Dpb11のチェックポイント機能について討議を行った。一方、他のSldタンパク質に関して、以下のことも明らかにした。1)Sld5はPsf1(Partner of Sld5)と複合体を形成し、複製開始領域にS期に結合し、DNAポリメラーゼのローディングに直接または間接的に関わっている。2)Dpb11と複合体を形成することを報告しているSld2は、S期にCdkキナーゼによりリン酸化される。このリン酸化がDpb11との複合体形成に必須であり、DNAポリメラーゼの複製開始領域へのローディングがSld2のリン酸化を介して制御されている可能性を示した。
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