研究概要 |
出芽酵母のDpb11は、タンパク質間の相互作用に働くBRCT(BRCA1C-Terminus)ドメインを4つ持ち、染色体DNA複製と細胞周期チェックポイントに関与している。また、Dpb11の機能を知るため、Dpb11と相互作用するSld(Synthetic lethal with dpb11-1)1〜6を分離している。本研究においては、以下のことを明らかにした。1)Dpb11は、DNAポリメラーゼεと複合体を形成し、DNAポリメラーゼの複製開始領域へのローディングに必要である。2)ヒドロキシ尿素によりDNA複製を阻害すると、複製酵素のS期後期に使用される複製開始領域への結合が抑えられるが、dpb11変異では、他のチェックポイント変異同様にこの抑制は解除される。これが、Dpb11のチェックポイントの機能にとって重要であろうと考えられる。3)Sld3はCdc45同様に、S期初期に活性化される複製開始領域にはG1期から、S期後期に使われる複製開始領域にはS期後期に結合する。4)Sld3とCdc45は複合体を形成し、この複合体形成がそれぞれのタンパク質が複製開始領域に結合するために必要である。5)Sld3,Cdc45の複製開始領域への結合が、複製開始領域の解離に必要である。6)Sld5はPsf1(Partner of Sld5)と複合体を形成し、複製開始領域にS期に結合し、DNAポリメラーゼのローディングに直接または間接的に関わっている。7)Dpb11と複合体を形成することを報告しているSld2は、S期にCdkキナーゼによりリン酸化される。このリン酸化がDpb11との複合体形成に必須であり、DNAポリメラーゼの複製開始領域へのローディングがSld2のリン酸化を介して制御されている可能性を示した。これらのことから、Dpb11及びSldタンパク質群からなる複合体が、DNAポリメラーゼが複製開始領域にローディングするために働いていることが分かった。今後の詳細な解析により、より細かい個々のステップが明らかにされてゆくものと考えている。
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