p53のN末端に近いThr18からLeu26の領域はp53をネガティブに制御する蛋白質Mdm2が結合する領域である。Carol Prives教授との共同研究で、われわれはその領域内にあるSer20がin vivoでもリン酸化される部位でありことをすでに見つけていたが、今回、それをリン酸化する酵素の精製を進めて同定したところ、Chk2とChk1であることがわかった。この両キナーゼはDNAがダメージを受けた時や、DNA複製異常が生じた時にチェックポイントコントロールのために働くことが酵母で最初に示され、ヒトでも同様な働きをすることが示されていたものである。しかし、p53を直接にリン酸化するとは思われていなかった。つい最近、米国のグループによって、癌患者が頻発するLi-Fraumeni症候群のうちp53に異常が無いものではChk2遺伝子に異常があることが見つけられた。これはわれわれの発見によってよく説明できる。 p53はガンマ線照射後のG1あるいはG2停止に必要であるが、DNA複製阻害はp53非依存性のS期停止を引き起こす。われわれは、DNA複製がヒドロキシウレアかアフィディコリンで阻害された時、あるいは、ガンマ線でDNAがダメージを受けた時のp53への応答を解析した。その結果、阻止されたDNA複製フォークはp53を修飾して安定化させるキナーゼ類を活性化はするにもかかわらず、ATMの下流でp53の転写活性化をそこなうと考えられる結果が得られた。
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