米国におけるフィランソロピーは、寛容な税制度に支えられ、個人や企業がNPOへ寄付する習慣が確立している。高等研究機関は、フィランソロピーの受け手として極めて重要であり、特に、新分野め開拓など、失敗するかもしれない研究プロジェクトに民間部門の資金が投ぜられている。 複雑系を提唱するサンタフェ研究所などは、その典型例である。とくに、学際的な研究によって新しい科学を創出するようなケースで、フィランソロピーは重要な役割を果たしている。 研究の過程で、国際的なフィランソロピーの流れが、申請書などの言語に依存している可能性が浮かび上がってきた。英語を使用する研究者がフィランソロピーの受け手になり安いのではないかという点である。この点については十分な裏付けはできていないが、研究分担者の出口正之はこうした状況を「言政学的状況」(Lingua-Political situation)と名づけた。また、研究協力者の柴崎文一は、フィランソロピーの申請がWEBを通して行われるようになった現状から、同様の状況がコンピュータ言語環境に依存している点に注目している。 一方、研究分担者の平田光司はフィランソロピーと科学の問題だけを取り出すのではなく、「科学と社会」という大きなコンテクストの中で、この問題を考えるべきだと主張している。本研究自体は理系・文系の研究者によって学際的に宰施され、3年間の共同研究の結果、さらに新しく多様な進展を見せつつある。
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