研究課題/領域番号 |
11695017
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
南方 暁 新潟大学, 法学部, 教授 (70125805)
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研究分担者 |
北島 幸夫 (大野 幸夫) 新潟大学, 法学部, 教授 (20282965)
西野 喜一 新潟大学, 法学部, 教授 (70228196)
鯰越 溢弘 新潟大学, 法学部, 教授 (80037085)
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キーワード | 法廷弁論 / 英国 / 調停 / 法廷弁護士 / 調停委員 / 刑事弁論 / 裁判外紛争処理 / 法曹教育 |
研究概要 |
1.一般に日本の裁判所では激しい攻撃防御がくりかえされた後で判決が出されるという傾向は少なく、民事事件では書面による処理が圧倒的に多く、刑事事件では「自認」事件が多いこともあって法廷で法律家が事実や法解釈をめぐり弁論術を駆使して戦うことも少なく、弁論術にはある程度の限界が見られる。 2.家事調停では、素人である当事者が弁巧みに自己の主張を実現するケースよりも、調停委員が、一定の方向をめざして当事者を牽引して行く現実があり、調停委員の弁論術が極めて重要な役割を果たしている。調停の性質から、強力な「訴訟」指揮をすることは出来ない。少なくとも建前として、当事者が主体的に協議をするよう支援することが調停委員に期待されている。そこで、調停委員はレトリックを駆使して非強制の形をとりながら当事者に「圧力」をかけ、「説得」し、一定の「望ましい」方向に結論をもってゆく。調停委員は特別な訓練を受けているわけではないが、日常生活のなかでの経験によってこのような弁論の技術を習得しているのである。 3.英国で約3世紀にわたって法廷弁論術が発展してきたのは「重罪」をめぐり法廷で派手な弁論で勝訴しようと法廷弁護士がエネルギーを費やしたからである。とりわけ19世紀まで、多くの法廷弁護士は陪審員の心をとらえるために雄弁な弁論を行うようになった。しかし、20世紀には「静かな弁護術」とでも言える方法がとられ、法廷での声高な論争や「雄弁」は好まれなくなり、陪審を納得させるには同時代の言葉を用いる傾向が強くなった。こうした動きは、法廷外の紛争処理など当事者の協議による紛争処理に関心が集まっている現状や弁論術の将来に影響を与えるものとなる。 4.法廷弁論に関する日英比較研究を行うに当たって、関連資料を検索するためキーワードを設定して効率的なアプローチの仕方を試験的に行ったが、日本における関連資料は必ずしも十分ではない。 (798字) *なお、英国における協力者の研究成果を含めて、本研究のまとめは別冊の小冊子として発行する。
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