研究概要 |
(1)逆"浮き草"構造をもつ高分子有機薄膜の構造と光スイッチング "逆浮き草"構造をもつ高分子材料(epichlorohydrin-ethlene-diamineに約18本のoctadecyl基がついたもの、ES3)のラングミュアーブロジェット(LB)膜を作成し、赤外スペクトルを測定した。赤外スペクトルの測定結果からアルキル鎖がトランス-ジグザグ構造をとっていること膜面に対してほぼ垂直に立っていることなどが明らかになった。さらにアミド基が水素結合の鎖を形成していることがわかった。次にこのLB膜の温度変化の赤外スペクトル測定を行った。その結果、60と110℃付近に相移転点があることがわかった。またその温度は1層膜と多層膜で変化することも明らかとなった。さらにoctadecyl基の数の異なる3種類(ES1、ES2、ES3と呼ぶ)を用意した。ES3と異なり、ES1、ES2ではoctadecyl基の数が少なくなるにつれ、アルキル基にゴーシュ構造をとりやすくなった。ES3のキャスト膜とLB膜が入れ子構造を取っているのに対し、ES1,ES2のLB膜ではそうなっていないことがわかった。 (2)逆"浮き草"構造をもつ高分子薄膜と類似構造をもつラングミュアーブロジェット膜の構造 逆"浮き草"構造をもつ高分子有機薄膜と類似構造をもつラングミュアーブロジェット(LB)膜の構造の研究としてアルキルテトラキノジメタン(Cn-TCNQ)のLB膜の研究を行った。とくにLB膜の秩序-無秩序転移の研究、LB膜作製後の配向変化などに重点をおき研究を行った。この研究では紫外可視分光法、赤外分光法、原子間力顕微鏡法をあわせ用いた。赤外分光法は分子構造に関する知見を、原子間力顕微鏡法は膜の形態に関する知見を、紫外可視分光法は発色団の会合状態と膜の状態に関する知見を与える。これらの方法をあわせ用いることによりユニークな知見をうることができた。 (3)有機薄膜の微小領域における構造とダイナミクス,および構造変化 有機薄膜の微小領域における構造とダイナミクス,および構造変化をAFMや時間分解の手法を取り入れた近接場光学顕微鏡(SNOM)などを用いて解析した。また,有機薄膜薄膜作製の溶媒や湿度条件と膜構造の相関についても考察した。
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